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検診でLDLコレステロールが高いと指摘された方へ
- 2025.04.13 |
検診で“LDLコレステロール高値”を指摘されて受診される患者様が多く、一度情報の整理のためにブログを作成しようと思います。
LDLコレステロールはいわゆる悪玉コレステロールといわれるもので、LDLコレステロール高値は心筋梗塞や脳梗塞などの“動脈硬化性疾患”の発症に密接に関わっています。「疾患について」の中に「脂質異常症」の説明ページがありますが、LDLコレステロールが140 mg/dL以上を超えた場合に“高コレステロール血症”という診断になり、LDL-Cが140mg/dL以上の場合に医療機関への受診が推奨されます。最近50~55歳の女性が「最近LDLコレステロールが上昇した」ということで受診されるケースが多いのですが、女性は閉経期に入るとLDLコレステロール上昇を抑える血中エストロゲン濃度が低下し、LDLコレステロールが上昇するためです。
実際にどれくらいの方が検診結果をもとに医療機関を受診しているについて、筑波大学から2024年にデータが出ており、LDLコレステロールの異常値別にみると、LDLコレステロール値が140~160,160~180,180 mg/dL以上の群でそれぞれ15.7%、18.6%、23.6%と重症度に応じて受診率は上がるものの、十分な受診率とはいえないことがわかりました。後からご説明しますが特に180mg/dLを超える方は家族性高コレステロール血症の可能性もあり、きちんと受診することをおすすめします。
実際に自分がどれくらい動脈硬化性疾患を発症するリスクがあるのか?については、「動脈硬化性疾患発症リスク」というのがあり10年間の動脈硬化性疾患発症リスクを評価することができます(メディメッセ桜十字様で検診を受けた場合にはくまモンの顔でリスク分類されています)。これは動脈硬化のリスクを算出する「久山町スコア」を用いており、以下のサイトから自分で算出することができます(注:糖尿病・慢性腎臓病・非心原性脳梗塞・閉塞性動脈硬化症のいずれかの疾患を既にお持ちの方は,10年以内に冠動脈疾患を発症する確率は10%以上の「ハイリスク患者」に該当しますので、この計算ツールは使用できません)
・動脈硬化性疾患発症予測ツール これりすくん Web版
https://www.j-athero.org/jp/general/ge_tool/
2%未満が低リスク、2~10%が中リスク、10%以上が高リスクと分類されます。
例えば Case 1
・55歳女性
・喫煙無し
・糖尿病無し 糖代謝異常なし
・血圧:132/76
・HDL-コレステロール:48 mg/dL LDLコレステロール:152mg/dL(↑)
の場合には動脈硬化リスクは1.4%(低リスク)、同年齢、同性で最もリスクが低い人と比べて 1.4倍 発症確率が高くなっています。
ここで仮にCase 2:喫煙あり、高血圧あり(収縮期150 mmHg)とすると動脈硬化リスク2.2%(中リスク)となり、さらにこの条件でCase 3:年齢が68歳になると動脈硬化リスクは5.2%(同年齢、同性で最もリスクが低い人と比べて 3.1倍 発症確率が高い)になります。
このようにリスクが重複すると動脈硬化のリスクは上がってきます。
それではLDLコレステロールを下げることでどれくらいリスクを下げれるか?と考えた場合に、仮にLDLコレステロールを100mg/dLまで下げると動脈硬化リスクはCase 1の場合1.4%→1.1%(-0.3%)、Case 2の場合には2.2%(-0.5%)、Case 3の場合には5.2%→3.9%(-1.3%)低下します。リスクが上がれば上がるほど治療によるリスク軽減の幅が大きくなり、特に中リスク以上の場合には特にまず生活習慣の改善を行なった後、不十分な場合には薬物療法の適応を考慮する必要があると考えています。
LDLコレステロール値が180 mg/dL以上の方は家族性高コレステロール血症といって遺伝的にLDLコレステロールが高く、動脈硬化のリスクが高い疾患の可能性や、ネフローゼ症候群や甲状腺機能低下症などほかの疾患によってLDLコレステロールが上昇している可能性もあり、きちんと受診をおすすめします。
循環器内科医の立場から申しますとLDLコレステロール低下療法の進歩により、LDLコレステロール低下と動脈硬化のリスクが軽減は相関があることが明らかになっており、“The lower, the better:低ければ低いほど良い”とされています。動脈硬化巣(プラーク)は「LDLコレステロール値×暴露期間」を関連があることからも、早期からLDLコレステロールに対して介入する必要があります。
LDLコレステロールが高いと検診で指摘された方は医療機関を受診しましょう。