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高血圧治療ガイドライン2025(JSH2025)要点解説
- 2025.09.7 |
高血圧治療ガイドライン2025(JSH2025)要点解説:個別化と行動変容を軸にした新たな治療戦略
日本の高血圧者は約4,300万人といわれています。放置しておくと動脈硬化が進行し,脳卒中や心臓病,腎臓病など重大な病気になる危険性が高まりますが,治療によって血圧が良好にコントロールされているのはわずか27%程度と,主要経済国のなかの最低レベルの血圧管理状況です。
これについて,高い血圧を下げるメリットが国民に十分に理解されていない,医療者においても高血圧に対して積極的な対応が十分にはなされていないなどの問題点が指摘されており,今回の改訂では医学的な基本事項や最新のエビデンスの説明のみではなく,国民,患者,医療者が血圧を下げる行動につながるガイドラインにすることを作成方針として従来よりも目標値を厳格化し、薬物治療の開始と強化を強調したガイドラインになっています。
🔹 血圧管理目標の明確化
診察室血圧と家庭血圧の目標値を年齢や背景疾患に関わらず一律とし、より厳格な管理が求められています:
診察室血圧:130/80 mmHg未満
家庭血圧:125/75 mmHg未満
高齢者やフレイル患者では、臓器保護とQOLのバランスを考慮し、個別に調整する柔軟性も認められています。
🔹 治療戦略のグループ分けとステップ制
JSH2025では、治療対象を以下の3群に分類し、それぞれに応じた治療方針を提示しています:
1.低リスク群(Grade I 高血圧)
生活習慣改善を中心に、3〜6か月の経過観察後に薬物療法を検討。
2.中等度リスク群(Grade II 高血圧)
生活習慣改善と並行して、初期から薬物療法を開始。単剤療法からスタートし、効果不十分なら早期に併用療法へ。
3.高リスク群(Grade III 高血圧、合併症あり)
即時の薬物療法開始が推奨され、初期から2剤併用療法が基本。臓器障害や糖尿病、CKDなどの合併症に応じて薬剤選択を最適化。
🔹 推奨される主要降圧薬
以下の薬剤が第一選択(グループ1)として推奨され、患者背景に応じて組み合わせが検討されます:
・長時間作用型Ca拮抗薬
・ARBまたはACE阻害薬
・少量サイアザイド系利尿薬
・β遮断薬
次に使う薬剤(グループ2)としては
・ARNI(アンジオテンシン受容体/ネプリライシン阻害薬)
・ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
治療抵抗性高血圧や特殊な病態に対して用いる薬剤(グループ3)としては
・α遮断薬
・ヒドララジン
・中枢神経交感神経抑制薬 など
それぞれの降圧薬のメリットや副作用も有り、個別に降圧薬については選択していきます。
🔹 行動変容支援とテクノロジーの活用
患者の自己管理を促すため、以下のような支援策が導入されています:
・減塩目標:1日6g未満(尿中Na/K比の活用)
・スマートフォンアプリによる血圧記録・服薬管理
・医療者による動機づけ面接(Motivational Interviewing)
行動科学の知見を取り入れた支援が、治療継続率の向上に寄与します。
📘 まとめ
JSH2025は、単なるガイドラインではなく「患者と医療者が協働する治療モデル」への転換を示しています。治療の個別化、行動変容支援、テクノロジーの活用を通じて、より持続可能で効果的な高血圧管理が望まれます。