内科・循環器内科・心臓リハビリテーション科

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2023年 欧州心臓病学会(ESC)報告 ①

  • 2024.01.8  | 

2023年8月にオランダ アムステルダムで行なわれた欧州心臓病学会(ESC)に参加しました。

もっと早くブログに公開したかったのですが、すでに年が明けてしまいました…。

アムステルダムの町並みは綺麗で、まさに”ハウステンボス”でした。

心アミロイドーシス患者において手根管症候群の既往を有する症例が50%程度と頻度が高く、両側手根管症候群は将来的な心アミロイドーシス発症のリスクと言われています。私は手根管症候群に対して手根管開放術を行なった患者様の中でどれくらい摘出滑膜にアミロイド沈着が認められるか、その中でどれくらいの患者様が心アミロイドーシスと診断されたかという研究結果についてこの学会で報告させて頂きました(この研究の最終結果はCirclation Journalという医学誌に報告しています 。どなたでも結果を読むことが出来ます https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/87/8/87_CJ-23-0223/_article/-char/ja)

手根管症候群に対して手根管開放術を行なった669名(平均年齢64.1±12.2歳)の患者様の摘出した滑膜を調べてみると、アミロイド沈着を認めたのは39%で、男性においては62%で女性(26%)よりも高率でした。アミロイド沈着を認めた患者様(111名)に心アミロイドーシスのスクリーニング検査(心電図、心エコー、心臓バイオマーカー)を行ない、心アミロイドーシスが疑わしい患者様(12名)に詳しい画像診断を行なったところ6名において心アミロイドーシスに矛盾しない画像所見が確認されました。
以上の結果から心アミロイドーシスと診断された症例は全体の5.4%(6/111)で、男性に限定すると10%という結果になりました。
事前に予想していたよりも手根管症候群の手術をされた時点で心アミロイドーシスと診断される症例は多くなかったという印象です。但し高齢の男性など心アミロイドーシスの有病率が高い集団においては診断率は高くなることが予想されます。
現在ご協力頂いている方を経時的に心エコーなどで評価を行ない、心アミロイドーシスと新たに診断される方がどれくらいいらっしゃるのか、心エコーや心臓バイオマーカーの所見がどのように変化していくかについては研究を継続しています。

次回は私がESC 2023で注目した臨床研究①ATTRibute-CM:トランスサイレチン型アミロイドーシスに対するAcoramidisという新しい薬の効果に関する報告と②STEP-HFpEF:駆出率の保たれた心不全と肥満を有する患者に対するセマグルチドの効果、③ESC 2023年版心筋症ガイドラインについてコメントしたいと思います。

 

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