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心不全予防に関するステートメント
- 2026.02.15 |
2026年2月に「心不全予防に関するステートメント」が日本心不全学会より発表されました。こちらについて大学病院や心不全専門施設で仕事をしてきた経験と、開業医として心不全予防に携わるようになった実体験を元に、私なりの意見を述べさせて頂きます。
このステートメントでは循環器専門医だけではなく非専門医が心不全の予防・評価および適切なタイミングで循環器専門医に紹介し連携していく指針が簡潔に述べられています。心不全患者は増加傾向にあり専門医だけではなく、非専門医の先生方にも心不全の予防や診断、管理にご助力頂き、心不全に対する医療体制が充実することが目的です。
診療フローチャートは以下の通りです
まず大事なことは高血圧や動脈硬化性疾患、糖尿病や慢性腎臓病、肥満など心不全リスクがある場合には「心不全の診断および予後予測に関連するBNPまたはNTproBNPという血液検査を1年に1度は実施する」ことです。BNP<35 pg/mLまたはNT-proBNP<125 pg/mLであれば心不全の可能性が低いため心不全の否定には有用です。逆にBNP≧35 pg/mLまたはNT-proBNP≧125pg/mLと上昇していれば少なくとも「ステージB」の心不全状態にあると判断されます。
「ステージB」の心不全とは「心臓の構造的・機能的異常およびBNP高値」が基準となっていますが、「心臓の構造的・機能的異常」を評価するためには心エコーを必要で実臨床において非専門医の先生方が評価することは不可能です。そのため現実的に「ステージB」と診断するには上記のBNPまたはNT-proBNP上昇、または心房細動の既往、心筋梗塞の既往、弁膜症などの病歴に基づく判断になると考えます。
循環器専門医とどのように連携するかについては「ステージBであれば可能な限り連携・紹介」とあるのですが、例えば後期高齢者の高血圧症例においてBNPまたはNT-proBNPが上昇しているケースは少なくなく、すべての症例を紹介するか迷われることが多いかと思います。心不全の診療経験があり各検査所見からまだ心不全の徴候やBNPまたはNT-proBNPの上昇が軽微であると判断されるのであれば、定期的なBNPまたはNT-proBNPの測定を実施していただくことで問題は無いともいますが、特に紹介を検討した方が良い症例については以下の様な症例です。
・下腿浮腫や息切れ、胸痛、動悸がある(=ステージC:症候性心不全の可能性)
・心不全の可能性が高いとされる「BNP≧100 pg/mLまたはNT-proBNP≧300 pg/mL」を越えているが今まで一度も専門医の評価を受けていない
・心電図で左室肥大や左房負荷所見、異常Q波がある
・経時的に胸部レントゲン写真で心胸郭比が拡大している
・身体所見で頸静脈怒張(=座位で外頸静脈が見えたり、特に吸気時に内頸静脈が拍動して見える)や心雑音がある
・家族歴に心不全や心筋症、突然死、動脈硬化性疾患を有する
・若年症例(おおよそ60歳以下)
逆に紹介を受けた循環器専門医はどのように評価し、どのように連携すると良いのか?についての私見です。心エコーを含めて一通りの評価と内服薬の確認、調整を実施するのですが、紹介をしてくださった先生方にどのような点に注意して、どのような所見があれば再度紹介して頂きたいのかを明確にしておく必要があると考えています。再診のタイミングや必要性については個別の判断になりますが、患者さんおよびその家族にも心不全悪化時の徴候や症状を伝えておいて自分でも受診の必要性について判断できるように説明しておくことが望ましいです。
治療については高血圧や心不全診療ガイドラインに基づく薬剤選択が提案されています。特に今回のステートメントでも目を引くのが
・糖尿病患者および肥満症+動脈硬化性心血管病患者に対するSGLT2阻害薬やGLP-1作動薬を中心とした診療
・糖尿病+慢性腎臓病患者に対するフィネレノン推奨
これらの内服薬はあらたな心不全治療の薬剤になる可能性があると考えています。
皆様の心不全診療および心不全への理解が深まれば幸いです。

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