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左室収縮率が保持された心不全に対するフィネレノンの有用性:FINEARTS-HF試験(ESC 2024 発表)

  • 2024.09.11  | 

フィネレノン(商品名:ケレンディア)は現在2型糖尿病を合併する慢性腎臓病に対して適応を有している非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)です。もともとMR拮抗薬は左室収縮力の低下した心不全(左室駆出率40%以下)に対しては有用性が証明されており、心不全治療ガイドラインではClass Iの推奨を有する薬剤で、「慢性心不全」の治療適応を有する薬剤は「スピロノラクトン」「エプレレノン」の2剤です。

今回ESC 2024でFINEARTS-HFという左室駆出率40%以上の“左室駆出率の保持されたまたは軽度低下した心不全患者”に対するフィネレノンの有用性と安全性を評価した研究結果が発表され、New England Journal of medicineに掲載されました。過去にはTOPCAT試験でMR拮抗薬であるスピロノラクトンの左室収縮力が保持された心不全患者に対する有用性が検証されましたが、確固たる有用性は示されていませんでした。

この試験は6016名の対象患者をフィネレノン群とプラセボ群に無作為に割り付け、主要評価項目は心不全増悪および心血管死亡でした。結果はフィネレノン群のほうがプラセボ群と比較して主要評価項目においては16%のリスク低下(p=0.007)という結果で、今回初めてフィネレノンがMR拮抗薬で左室駆出率40%以上の心不全に対する有用性を示したことになります。今後フィネレノンはClass Iの治療薬として“格上げ”され、SGLT2阻害薬と共に左室駆出率が保持された心不全の治療薬として使用されることが多くなると思います。ただ心血管死亡においては差がつかず、やはり高カリウム血症のイベントはフィネレノン群で多かったので、このあたりは注意が必要です。

左室駆出率の保持された心不全に対してスピロノラクトンとフィネレノンのどちらが良いのか?については直接比較のデータが無いので、結論は出ないのですが、個人的にはTOPCAT試験(この試験の左室駆出率は45%以上)のロシアとジョージアを除いた解析のイベント曲線(18%のリスク低下:p=0.026)とFINEARTS-HF試験の初回心不全増悪+心血管死亡のイベント曲線は似ている感じがあり、実はスピロノラクトンでも有効なのかも?と思ったりします。

また今回の試験では心アミロイドーシスなどの2次性心筋症は除外されているのですが、MRブロッカーは心アミロイドーシスによる心不全症例においても有用である可能性が示唆されており、左室駆出率の保持された心不全に潜在的に存在する心アミロイドーシスを除外せずに有用性がでると、さらに実臨床に即した結果になると思います。

フィネレノンは左室収縮率の低下した心不全においても有用性を検証するFINALITY-HF試験も実施中であり、今後さらにMR拮抗薬による心不全治療については多くの治験が得られることと期待しています。

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