内科・循環器内科・心臓リハビリテーション科

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論文公開のご報告

  • 2024.05.19  | 

院長が論文作成指導を行った論文が2本公開されました。

1つめは熊本大学病院 生命科学研究部 循環器内科学の大学院生の小國哲也先生の論文です。心臓CTでは心臓の栄養血管である冠動脈狭窄の評価に加えて、心臓の筋肉(心筋)にダメージがあるか、それがどのような分布をしているかによって潜在的な心筋障害を評価することが可能です。今回の論文では心臓CTを実施した874名(男性60歳以上、女性70歳以上)のextracellular volume fraction(ECV:心筋障害の指標)を評価し、全体の12.4%に心筋障害を疑う所見を認めました。このような所見を有する方は高齢男性で、BNPや高感度トロポニンTという心臓の負荷や障害を評価する採血結果が上昇している、心エコーで左室肥大や収縮力が低下している症例に多いことがわかりました。また、心臓CTで心筋障害(ECV≧35%)がある患者さんの14%に心アミロイドーシスの診断または可能性が高い症例であったことをEuropean Heart Journal Openという医学誌に発表しています。この研究によって心臓CTが冠動脈のみならず、心筋障害を評価することで潜在的な心筋障害の評価、心不全の原因となる心筋症の診断につながることが期待されます。熊本大学病院 画像診断・治療科 准教授の尾田済太郞先生、助教の木藤雅文先生には論文作成においては多大なご協力を頂きました。この場をお借りして感謝申し上げます。

2つめは熊本大学病院循環器内科 心血管予防医学共同研究講座 特任助教 九山直人先生の論文でJournal of the American Heart Associationという医学誌に公開されました。熊本大学病院においてトランスサイレチン型心アミロイドーシスの治療薬であるタファミジスを1年以上投与した101名を対象として前述のBNPや高感度トロポニンTという心臓バイオマーカーの経時変化を見たところ、投与1年後には高感度トロポニンTは有意に低下(=心筋障害の改善)が見られ、BNPの低下および高感度トロポニンTが治療1年後に低下している症例は心不全入院や死亡などが低下する傾向にあり、逆に双方とも上昇する患者においては心事故が多いことを報告しています。タファミジスの治療効果を評価する上で心臓バイオマーカーは簡便かつ普遍的な指標であり、治療効果を元に予後予測や今後治験が進んでいる新しい薬剤による治療の可能性について知見が得られることで、難病に指定されているトランスサイレチン型心アミロイドーシスの患者さんの治療選択が増えることを期待しています。

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